「与えられたタイトルを取っ掛かりにして書く……ということ？」＜本書２％＞ 臨床犯罪学者・火村英生の国名シリーズ第11弾．冒頭で編集者に次作の題名を課され，悩む有栖川有栖が可笑しい． 舞鶴の海辺で見つかった青年は記憶を失っていた．所持していた日本扇を手掛かりに身元が判明し，青年は京都・洛北の実家に帰ることができたが，密室殺人が発生してしまう．府警の依頼を受けた火村は有栖と共に捜査に乗り出すが…． 序章，７章，終章の構成．表記は概ね有栖の一人称視点で，火村の活躍を描く．二人の掛け合いを標準語と大阪弁で書き分け，丹念な描写ながらテンポよく進む．世相を織り込むも歳は取らず，14年来の友人というシリーズ設定だ． 犯人は絞りやすいが，ロジックが綺麗で唸らされる．特殊設定や過剰なトリックがなくても十分面白い．日本扇の象徴する悲劇性が胸を打つ．あとがきに〈シーズン２〉スタートとあり，シリーズはまだまだ続きそう．

高校生の頃からのファンで新作が出る度に購入してますが、中でもやはり国名シリーズが好きです。 第一の事件は密室殺人だったため、今回はいかにして密室の謎を解くのか、という展開になるのかと思ったらそうではなく。舞台は一軒のお屋敷、邸内で関係者の話を次々に聞きながら議論を交わし、と舞台も時間軸もほとんど動かないうちに真相にたどり着くのですが、物語に引き込まれてあっという間に読み切りました。 ただ、真相は悲しいものでした。誰も救われないというか。それでもこちらが第二シリーズ開始になるようなので、今後も新作を待ちたいと思います。

約360ページでそこそこの厚みがありましたが読みやすい文体でサクッと読めました。 内容に関しては『・・・え～』って感じです。ブーイングとまではいかないですけど、記憶喪失の青年の理由になんだそりゃくだらねぇと思いました。推理も大雑把で穴が複数あります。