本書は、地車のみならず、神輿や地車などの曳車について体系的にまとめた学術的にも価値のあるものだと思う。また、神事である神賑行事には本来の意味があったはずだが、今はその意味に目をつぶり、神賑行事を土日開催とすることにも警笛を鳴らしている。将来の祭礼文化遍歴のターニングポイントを抑えた書となるかもしれないと感じる書であった。 また、面白かったのは、岸和田型の地車の出自は、船であるという説である。水板に代表される彫り物や後梃子のドンスなどもその名残で川御座船と岸和田型地車の対応図は、「なるほど」と唸ってしまった。余談だが、今でもドンスは、岸和田の坂口商店という船具屋で購入しているのは、その名残かもしれないとも思った。 本書は、日本人のアイデンティティ復興させると感じる書である。祭礼関係者であれば、その洞察の深さを感じるものと思う。 祭礼に関係ない方でも日本人の深層にある精神を感じることができるので、一読されることをお勧めする。身近にある「祭り」の観方が変わるはずである。